[PR]血液型生年月日で運命診断:無料お試しも本格鑑定!

【第9話】〜3ヶ月コリック

 

 僕は、会社から帰るとき(僕の正体はサラリーマンだったのだ)いつも妻に帰るコールをしてから帰るので、妻は僕が家に到着する時間に合わせて夕食を作っていてくれる。「ただいまー」と帰って来て、薬用石けんで手を洗って、うがいをして、ユッキーにごあいさつをして少し遊ぶと夕ご飯になるのが、ユッキー誕生以来の習慣になっていた。ところが、3ヶ月あたりになるころ、妻がご飯を作っていないことが多くなってしまったのだ。妻の言い訳は決まってこうだった。

「ご飯作ろうと思うとユッキーがぐずっちゃって」 

しかし、私はそんな言葉は信じなかった。なんと言ってもユッキーは“人格赤ちゃん”なのだ。母親が夕食のしたくをするころになるとぐずるなんて言うのは、およそユッキーを知るものには信用できる話ではない。しかし、私は見てしまったのだ。ある休日の夕刻、ユッキーがぐずり出すのを。「おしめも濡れてない、ミルクもあげた」でも、機嫌が良くないときがあるのだ。あやしてる間は何とか笑ったりしているのだが、あやし終わると「ふえーん」となってしまう。妻は、主張した。「おしめでも、ミルクでもないの。泣きたいから泣くのよ」僕はその台詞に妻とユッキーの成長を見たような気がした。妻は妻で、ユッキーが泣き出すような原因をすべて当たってみて、もう本当に何もないはずなのにぐずり出すユッキーを見て、そういう結論を出したようだった。

 ユッキーもすごい成長ぶりだった。人生にはお腹がすいてなくても、おしっこを漏らしていなくても、泣きたくなるような瞬間というのがあるものなのだ。ユッキーは、早くも3ヶ月にしてそんな人生の深みが分かってきてるようだった。妻は事も無げに言ってのけた。

「それ、3ヶ月コリックって言うのよね。本に書いてあったわ」

 3ヶ月ごろになるとおしめ、空腹以上のもうちょっと複雑な理由でぐずることがあり、始まる時期にちなんで「3ヶ月コリック」と呼ばれているらしかった。この呼び名を知ってからと言うもの、僕たちの電話はスムーズになった。

「もしもし、これから帰るよ〜ユッキー元気?」

「それがまたぐずぐず言ってるのよ〜」と妻。

「あー3ヶ月コリックだろ」

「そうね3ヶ月コリックね」

てな具合に、名前さえ付いてしまえば、もう動じることも無くなっていた。暗がりで揺れ動くのが幽霊ではなくカーテンだと分かった後のように。

 

 

 

 


[PR]恋愛の悩みなら:こころtoからだで診断!